午睡と虫養い

観た映画・ドラマの感想。時々漫画と本も。

【映画】ウーマン・トーキング

womentalking-movie.jp

 

2023年6月3日土曜日、レイトショーで観てきました。冒頭から辛い。
ところで邦題もウィメン・トーキングで良かったのでは。何故単数にした?

 

ボリビアの実話(実話…)を元にした小説が原作だそうで。日本語訳はまだ出てないっぽい。出してー!!
私は「1世紀前くらいの、アメリカの田舎」が舞台だと勝手に思っていたので、突然の2010年国勢調査に「えええ現代の話!?最近!?」とまず驚き、さらに南十字星に驚いてオーストラリアの話かと勘違いしました。全然違った。敢えて予備知識なしで観たかったからと言って我ながら思い込み酷い。

 

いろいろしんどい映画なのですが、ぜひいろんな人に観てほしい。私は最初彼女たちの選択が(劇中でも指摘されるように)後ろ向きな気がしたのですが、そうではないんですね。あの過程を経て、「去る」ではなく「出て行く」選択にたどり着けたのは本当に良かったと思う。
私が観たのはレイトショーで、男性も割といた気がします。男性の感想も聞いてみたい。

 

最初のクレジットで『PLAN B』と出てきて「おおブラピの」と思っていたら、冒頭でフランシス・マクドーマンドが出てきてびっくりしました。マクドーマンドが権利を獲得して、プランBに持ち込んだのだそうで。こういう作品を世に出してくれるマクドーマンドもプラピも好きだ。


以下ネタバレ含みます。注意。

 

 

 

オーナ:何故そう思考できるようになったのか、それが知りたかった。オーガスト(外の世界に行った人)のことを想ううちに、思考が広がったんだろうか。この説明がないので、正直私はマリーケイと同じくイラっとはした。
 あとマリーケイへの「質問」、あれはダメだよね〜謝罪を促してもらえて良かった。マリーケイもかなり酷いこと言ってたけどね…でもその言葉を引き出したのはオーナだからね…


オーガスト:あのままコロニーに残って教育し続けるの辛いだろうなー 個人的には「一緒に」と思ったけど、そうなるとコロニーにいる未成年の男の子たちが悪を受け継ぐことになるから、やはり残るしかなかったんだろうね。いやーでもなーーー
 劇中で挙げた詩人の言葉がとても良かった。あとでググる。→引っ掛からねえ!!

アーロンとサロメ:サロメのしたことをアーロンは受け入れるんだろうか。「強制はできない」とおばあちゃんたちは言っていたし、あとで一悶着ありそう。受け入れてほしいけれどもなー。

サロメかマリーケイが「全能の神ならば何故私たちを救わなかったのか!」と言っていて、「それな!」と思い切り同意した。その点にいつも私は引っかかってキリスト教には馴染めない。

「同じ経験をしたのになんであんただけ!」という、サロメ(だったかマリーケイだったか…)の言葉も印象的でした。同じ経験をしても、それぞれ消化の仕方や速度が違うから、差異が出てくるのは当然なんですが、外形的に分かりやすく現れる人に対し、現れない人は自分に落ち度があるように感じてしまうのではないか。なんてことを思いました。

 

マクドーマンド演じる、顔に傷を持つヤンツは最初から「何もしない」を選び、実際に自身は女たちに加わらず残ります。あの傷から察せられるように、彼女だって暴力を受けてきたんでしょう。彼女にとっては、きっと残り続けることが「戦う」「出ていく」ことに等しいのだろう。でも娘たちは逃がした。それこそ、言葉を持たない、何か大きな感情がそこにある気がします。愛のような切実な何か。

 

観ながら頭を過ったのは、書籍だと『BOYS』と『POWER』でした。特に『BOYS』だなあ。オーガストの頑張りに期待したい。ああでもほんと彼一人に背負わせるのはな…あ、ヤンツと共闘したり? ないか…あの二人が組むことはなさそう何となく…


『プロミシング・ヤング・ウーマン』『SHE SAID』など、これまで観てきた作品のこともブワッと思い出して、ああでも今こそきっと前に大きく踏み出す時。とも思いました。大人の女性として、私も下の世代に良い道を作っていかねば(踏み躙られて育ってきたかつての子供でもあるので、そこを飲み込まないといけないのは辛いけどね。どこかで誰かが引き受けないといけないからね)

 

最後のカットがすごく良かった。道の遠くを見る、というのは自動車教習所で習って日頃心がけていることでもあるので、感覚的によくわかった。

 

しかし、彼女たちのこれからが明るいのか?って言ったら、残念ながら「わからない」。
感想で「感動!」「最後には希望が」みたいなのを見かけるとちょっともやもやしてしまう。いや感想は個人次第ですから、私が口出すことじゃないんだけどさ。「自分たちで選択できた!良かったね!」とかそういう話ではないと思うんだよな。

そうしたモヤモヤまで含めて、観た人がたくさん、いろいろ考えることを期待されている気がします。