午睡と虫養い

観た映画・ドラマの感想。時々漫画と本も。

スパイの妻

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スパイの妻

wos.bitters.co.jp

 

注)若干ネタバレ的な感想が含まれます。

 

2020年10月16日(金)公開。18日日曜日に観てきました。久しぶりに青空も見えて、良い日和でした。

映画館は同日公開になった『鬼滅の刃 無限列車編』の影響で、久しぶりに人でいっぱいになっていました。良いこと良いこと。それにしても『鬼滅の刃』はすごいですね。良質なコンテンツには力があると再確認。主人公兄妹のコスプレをしたお子さんたちもいて可愛かった。鬼滅の刃柄のマスクしている人たちもたくさんいたし。

 

邦画を観ることはほとんどないのですが、なんとなく気になったので観に行った『スパイの妻』。普段「別の言語を喋っているのを聞きながら字幕を読む」スタイルでばかり映画鑑賞しているので、最初「字幕無し、耳から入ってくる言語が理解できる」という状況に少し戸惑いました(そして戸惑った自分がちょっと可笑しかった)最近はTV観るときも字幕つけたりしているしね…(子供の声や視聴している動画がうるさいのでよく聞こえなくて、補助のために字幕オンにしています)

 

閑話休題

 

高橋一生高橋一生らしい役でホッとした〜

直近(と言ってももう去年の話…えっ1年以上前とかウソでしょ…)で観た高橋一生は『引っ越し大名』の狂戦士高橋一生で、こういう脳筋的な役も悪くないなとは思いましたが、なんとなく優作(演:高橋一生)みたいな方がしっくりきますね、やはり。

蒼井優ちゃんの演技が圧巻! 前半と後半での聡子の内面の変化が繊細に、でもしっかり伝わってきて、それこそ「お見事!」でした(映画を観ると「お見事」の意味が分かりますよ〜。ぜひ劇場で)

劇中、音楽が少なめでしたがその分「ここぞ!」というところで流れていたのが印象的でした。エンドロールと共に流れる曲もとても美しかったです(音楽担当の長岡亮介さんは星野源ファンにはお馴染みのギタリスト)

 

聡子(演:蒼井優)を観ていると、『この世界の片隅に』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の、すずさんが思い出されて仕方ありませんでした。同時に『ジョジョ・ラビット』や、今読んでいる『パチンコ』も思い出されました(他に、『コードネーム・ヴェリティ』とか)

 特に終盤の慟哭シーン。聡子やすずさんのように、慟哭した人がどれほどいたことでしょう……戦争はダメだよ。問答無用にダメ。

「うちも知らんまま死にたかったなあ……」とは、『この世界の片隅に』のすずさんの言葉ですが、聡子も知らんままの方がよかったのかな。でも知らなくては始まらないし、無知でいること、それだけで罪である場合もあるのだ。なんてことも考えました。

しかし「あなたは何も見ていない」等聡子は劇中で度々なじられますが、見せない見せてくれない見せられないことをしているのはそっちなのにね! 本当に(社会的権力を持っている)男ってのは!! この辺りは非常に腹が立ちました。

 

ここからは不満点。

もう少し登場人物たちの背景を丁寧に描いてほしかったです。例えば、優作・聡子がお互いに深い愛情を持っていることはわかりますが、どのようにして深い愛情を持つようになったのかが鑑賞する側にはわからない。一目惚れしたとか何でもいいから、「こういうエピソードを重ねて愛情が深まっていったんだろうな」と思わせてくれる過去の映像描写がワンシーンでもあれば、観ていて、より感情移入できたんですが。*1

それから「先を推理しないで観る/読む」を信条としている私ですら、鑑賞しながら優作が何をしたのかうっすら予想がついてしまったのが残念。もう一捻りほしかった!

全体的に観ると、どこに(何に)重心を置いているのかが、ちょっとわかりにくかったのも難点。私は聡子の「無知でいる自分を自覚したこと」を核に鑑賞していましたが、監督の意図はどうだったのかしら。パンフレットには載ってたのかなあ(今回購入せず)

 

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2020年10月23日。追記です。ネタバレしてますのでご了承ください。

 

 

 

思ったんだけど、優作さんのやったことはどういう気持ちから出たものだったんだろうか。

結末としてはきっと優作と聡子はアメリカで新しい人生を一緒に歩んだんだろうと思いますが。しかし思い返してみると、あの仕打ちはどうなんだろうか。

劇場が明るくなってから「妻を守ったんだね〜」という感想が聞こえてきたのですが、そしてそのつもりで優作はあのようにしたのでしょうが、うーん、しかしそれはちょっと独りよがりなのではないだろうか。

と、疑い始めると、上海に行った英国人商人に、預けたフィルムをネタに揺すられている、っていうのも嘘なんじゃないかと…最初から優作さんが持ってたんじゃないの? 大事なものだしさあ。

この説で進めると、私には優作が、少なくともある時点では、聡子を捨てたとしか思えないんだよな。軍部に聡子に好意を持っている泰治がいるとは言え、発見されたらただでは済まないでしょう。すごく無謀な賭けだと思います。可愛さ余って憎さ百倍もあり得るのだし。それがわかってないはずがないのに、実行した。微妙ーーーーーーーー!

前述の通り、監督としては「その後二人はアメリカでひっそりと静かに余生を送りました」なんだろうけど、「優作と再会した聡子が、崖からにこやかに優作を突き落とす」くらいのサイドストーリーがあってもいい気がしましたよ。

 

この世界の片隅に

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この世界の(さらにいくつもの)片隅に

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ジョジョ・ラビット (字幕版)

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*1:「描かれていないからこそ想像を膨らませるんですよ!」と二次創作する人に言われたことがありますが。私は想像するにも、その元となるエピソードは作り手側にきちんと示して欲しいんだよなあ。