【映画】君たちはどう生きるか
2023年07月15日土曜日、劇場鑑賞。公開は前日14日。
いまだに公式サイトがまともに存在していない!!なのでリンクが貼りたくても貼る先がない!!前代未聞だなぁ。結局宣伝上手いですね鈴木さん…
私は結構ジブリ、宮崎駿監督作品が好きなので前々から公開日をスケジュールアプリに登録しておくくらいとても楽しみにしていました。でも今回全然映画に関する情報の開示がなくて、公開日の前々日くらいからだんだん「そういや新作の公開が近いのでは…」みたいにネットがざわつき出し「おっと観なければ」という空気が醸し出され……正直私は「なんだよみんなして今更ー!!」と複雑な心境でした。まあいいんだけどさ!
公開日に主題歌が米津玄師『地球儀』であることも発表され「横アリで歌ったという噂の新曲か!」「横アリに駿さんと鈴木さんから花輪が来てたとTwitterで見たけどそう言うことか!」といろいろと納得。後述しますがもう一つ「ああああああそう言うことー!?」と気づいたこともありました。なお『地球儀』は情報を知ってすぐに初回特典版を予約購入し、17日0時に配信も開始されたので秒で買いました。6月14日にたまアリのライブに行って以来私は米津玄師沼の住人ですよ…
さて、以下大いにネタバレしている感想になります! 未見の方はぜひ鑑賞後にどうぞ!!
公開日に声優陣がとても豪華であることも速報で知りましたが、私は残念ながら人の声は全然聞き分けられないので、誰が誰をやっているのかさっぱりでした。エンドクレジットできっとわかる!と思ったら「役名/声優」ではなく「声優」の名前しか書かれてなかったという絶望感。おのれ鈴木P。
菅田将暉がアオサギ役ということも、鑑賞後に初日に鑑賞した友人と感想をLINEで遣り取りして知りました。鈍いにも程がある。それから主人公父がキムタクだということも全然分かりませんでした。辛い。
冒頭からアニメーションの美しさに驚嘆しました。とても悲しい喪失のシーンなんですが、でもその表現の美しさに、ただただ見惚れていました。
エンドクレジットに掲載されていた作画協力、『スタジオポノック』『スタジオ地図』『Production I.G.』その他、名だたる一流スタジオばかりだったので震えちゃいましたわ…ジブリすごいね…ジブリ出身の人のスタジオが多かったとはいえ、それぞれもうきっちり自分たちの作品を世に出しているスタジオなのにさ…
序盤の、現実の部分は結構しんどかったですね。空襲で病院が焼かれてしまうのもそうだし、2年?経って、長く会っていなかった叔母が新しいお母さんで、もうお腹に赤ちゃんがいるとか…母を喪った少年にはしんどいわー父ゲスいわーーーー戦時中のことだから、妻が亡くなったのでその妹を後妻に、というのは割とあったケースだろうなとは思ったけど。でもせめてちゃんと再婚してからにしなよ!
主人公父については、軍需産業関連の仕事をしていると思われ、まあなんだ、汚いことも結構やってるんでしょうね…そして戦後も落ち着いた感じだったことを思うに、上手く世渡りしてるんでしょうね……前妻・後妻・子供たちに対して愛情が感じられることだけは救いだけど。
後妻である、主人公・眞人の実母(ヒミ/ヒサコ?だったと思う)の実妹・ナツコさん。思ったんだけどこの人のサイドストーリーも作れそう。ヒサコとナツコがどれくらい年齢が離れているのかわかりませんが、眞人が12〜14歳くらいかな?と思われるのでヒサコは16歳で結婚したとして亡くなった当時、若くても30歳前後。ということはナツコも余程歳が離れていない限り20代後半くらい? 戦時中に20代後半で独身だったというのは結構不自然な気がするんですよね。一度結婚して離縁して実家に戻っていたのか、それとも眞人の父が初恋の人で忘れられなかったとか? 無駄に想像が膨らみました…
眞人、美少年で良かったです(ただの好み)。でも割といい性格してましたね。実母を喪って、新しいお母さんがいつの間にできていて…という辛い境遇も大いに影響しているでしょうが、礼儀正しいけれどもタバコをくすねて交渉材料に使ってたし、自傷して学校に行かなくて済むようにしたりとか。君、お父さんの良い後継者になれそうだ…商売人の才能あるよ…
一方、裕福な家の子なのに弓矢を自作するあたり、昭和だなと思いました。時代〜
眞人は思い返すに、かなり複雑な性格設定になっていますね。その複雑さも、駿さんが描いておきたかったことなのかも?
アオサギは当初すっごく不気味だったので、塔の中で中の人が出てきた時にはびっくりしました。いや中に何かいるのはポスターからも窺えましたが、おっさんかい。そしてあのビジュアルは…オペラ『魔笛』のパパゲーノではないか! 私は『魔笛』のストーリーをうっすらとしか覚えてなかったのですが、わざわざこの造形にしたということは意味があるに違いない。で、今調べたら「パパゲーノ効果」というのがあるんですね。
名前の由来はモーツァルト作曲のオペラ『魔笛』に登場する恋に身を焦がして自殺しようとしたものの、自殺するのをやめて生きることを選んだ鳥刺しの男パパゲーノに因む[2][3]。特に、厳しい環境で自殺念慮を持った個人が、その危機を乗り越える報道内容は、有意な自殺予防効果があるとされている[4]。
なるほどこれだな!!ていうかまんまですね!!!
先述した通り、鑑賞後に、公開日に鑑賞した友人とLINEで感想の遣り取りをしました。自分が気づかなかったことがたくさんあってとても有意義だったのですが、その中で友人が
「明らかに危ない存在であるアオサギに近づくのは希死念慮からだよね」
「でもアオサギをやっつけようとするのは生きる意志の表れ」
と指摘してまして。なるほどねー!そうだねー!!(興奮)
アオサギのように「このキャラはあれをモチーフにしているのでは?」というキャラでは、私はヒミちゃんについてイザナミが産んだカグツチを連想しました。
ヒミちゃんとヒミちゃんの母(眞人の祖母)については何の言及もないので完全に私の推測なのですが。ヒミちゃんが産屋に入らなかったのも、出産時にナツコに何かあってはいけないと思ったからかな?とか(まぁ、大叔父とインコ大王の会話からすると、そもそも産屋に入ってはいけない、という掟があったのだし、単純にそれを破る/破らないというだけの話かもしれませんが)
(wikiでカグツチ関連を読むと、結構面白いですね。ていうかコノハナサクヤヒメ可哀想!古事記の昔から女は不義を疑われるとかやってらんなーい!)
わらわら。不気味さを取り除いたコダマ。あれはグッズとして売れる。…とか考えちゃいました…我ながら汚れた大人になってしまった…
わらわらは生まれる前の赤ん坊だというのはすぐわかりましたが、あの世界に生きる人/生物が何を表してしているのか大変気になります。きっとこれから考察班が頑張ってくれるでしょうけれども。殺生ができない影の人たちは何なんだろう。そしてペリカン。捕られる魚。「最初からここに住んでいる」というキリコさん。
ヒミちゃん可愛かったですね。これまた割とわかりやすく「眞人の母だな」と察することができたので、パンにこんもりバターとジャムを盛って渡すシーンでは、パズーとシータのような関係ではなく「母と子」(友人からのLINEより)だなぁと思いました。
そしてあのバター&ジャムこんもりトーストはきっとこれからジブリ飯の一つになる…
ん?
母と子??
以下、米津玄師ライブ『2023年TOUR/空想』の、グッズページのスクショです。
下にスクロール。
ん?「母と子」T?
!?!?!?!?!?
明らかに鳥と母と子。
アオサギとヒミちゃんと眞人ーーーーーー!!!!!!!!!
まじかーーーーーー!!!!!!!!
先述の通り、私は2023年6月14日に運良くリセールに当選して、米津玄師のライブに行ってきたのですよ(そして米津沼に落ちた)
米津さんは『BOOTLEG』以来結構好きで割と聴いていたのですが、ライブ参加は初。そして他のグッズはまぁライブグッズとしてわかるとして、そんな中に見慣れないこのTシャツがあったので「なんだろう?」と思ってたんですよね…!同じく疑問に思った人はいたみたいで、Yahoo!知恵袋に「あれは何のグッズですか?」という質問が上がっていたのも見ました。すると古参ファンと思われる方からの回答で「恐らく新曲関連の何かだと思いますが、今のところ不明です」とあり、なるほどなー、米津さんはそういうグッズも出すんだね。くらいに思っていたのですが、
壮大な仕込みだったとは…!!!(いやわかんないけど。私のただの推測なだけですけど)
でも、今配信されたばかりの『地球儀』を鬼リピートしながらこの感想を書いているのですが、『君たちはどう生きるか』のことを深く深く考えて、ものすごく思い入れを込めてこの曲を書いたんだなあ、と感じています。そしてきっとライブツアー「空想」のタイトルにも、MCで話していた以上の思い入れがあったんじゃないかと。米津さんの創作の源泉となっている幼い頃からの「空想」の中には、宮崎作品が大きく存在していたはずだから(何せ『飛燕』はナウシカをイメージして作ったというし)。そして主題歌制作の依頼があったのは4年前だったということだから。
ところで『地球儀』リリースの報を、作曲家の坂東祐大氏がリツイートしてまして。このピアノ伴奏もひょっとして坂東さんかなあ。(ウィキの作品リストにしっかり「『地球儀』共編曲」とあるので関わったのは間違いなさそう)
私、米津玄師&坂東祐大のコンビ大好きなので、今後も良い関係が続いていくといいなあ。
※坂東さんは『ユーリ!!! on ICE』『大豆田とわ子と三人の元夫』『17才の帝国』の劇伴や、米津玄師のアルバム『STRAY SHEEP』で共編曲者として関わっている方です。
閑話休題。
アオサギと眞人、最初は殺るか殺られるかみたいな関係だったのが、徐々に「友達」と言える存在になっていく過程がよかったですね。あ、そうだ、眞人の表情からだんだん緊張が解けていっていく感じもしました。『となりのトトロ』のサツキが、お母さんの入院中は年齢の割に大人びていたのが、エンドクレジットの挿画では10歳らしい、子供らしい表情になっていたみたいに。
「ナツコさん」「ナツコお母さん」という呼び方も良かったなぁ。
産屋でのナツコさんはどこまで状況を把握していたのかわかりませんが、眞人に向かって「あなたなんか大嫌い!」というあの言葉も本音ではあったと思うんですよ。一方で、確かに愛情もあると思う。この映画はあくまで眞人から見た世界なので大人の事情についてはほとんど語れておらず推測するしかないのですが、そりゃナツコさんはナツコさんで思うところがあるに決まってるよね。
ところでこの映画、鳥がたくさん出てきますが、インコの扱いがw w w インコ好きの人には辛いんじゃないだろうか、とちょっと心配になったくらいでした。鳥好きさんたちの感想も聞いてみたい。
逆ギレインコ大王結構好き。
序盤でアオサギが眞人の部屋に入ってきて出ていった時もそうでしたが、飛び立つ時の鳥のフンの描写もきっちり描いているところが面白かったです。ゲス父もインコのフンまみれになったし、ナツコさんも。「おいおい、伝染病とか大丈夫か」と思っちゃったけどね…ファンタジーを素直に楽しめなくなってしまったのがちょっと寂しい。
駿さんの好きなものがこれでもか!ってくらい詰め込まれていたので、観ていてニヤニヤしちゃいました。空、飛ぶもの(今回は鳥)、機械の類(今回はゲス父が工場から一時的に持ってきた戦闘機のキャノピー)、洋館、海、蔦、苔、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた生き物(今回は魚とインコたちw インコたち多すぎィ!)、草原、シチュー、パン、妖怪かと見紛うオババ様たち、気風の良い中年?女性、などなど。そうだ、アオサギの高速はばたき、あれもフラップター(ラピュタで海賊たちが乗ってた、1〜2人乗りの飛行機)だよね!駿さんの(たぶん)好きなもの!!
本音を言うと、洋館とか塔とか海とか、『思い出のマーニー』を思い出しました。宮崎駿監督作品ではなく米林宏昌監督だけど。あとあれだ、キリコさんやヒミちゃんのお部屋は『借りぐらしのアリエッティ』(これも米林監督)を思い出しました。
ただね、「これだけ自分の好きなものを詰め込んで、少年が一つの、でもとてもとても大きいものを乗り越える話を作り上げたんだから、実質的に遺作になったりしないかな」ってちょっと心配になっちゃったんだよね…
米津さんが主題歌制作に携わることになった経緯や自分の思いを綴っているコメントで駿監督に向かって「そしてこれからもずっと作り続けてください。」と呼びかけて締めくくっていて。だから米津さんも「辞めないでね!」って思ったのかなあ。なんてね。
でも、今までも「引退宣言」とかしちゃってたけど結局こうして新作映画出したし。ジブリ美術館で上映されている短編とかも描いてるらしいし。
きっと、宮さんみたいなクリエイターは命尽きるその瞬間まで何かを創り続けているいる気がします。それが今回みたいに広く公開されなくても。頭の中でずっと何かを創っているじゃないかな。もうね、弱音とか自棄とかこの際捨てて、最後まで「宮崎駿監督」でいてほしいな、と思います。
思いつくままに書きましたが、ひとまずこれにて。
私は『君たちはどう生きるか』、かなり好きになりました。一言では言いにくいけど、ものすごく大きなものを受け取った気がします。
2023/08/20 追記:
・やはり坂東祐大さんはがっつり曲に関わっていらっしゃいました。曲中で使用されているピアノは坂東さんが幼少期から演奏してきたご実家のアップライトピアノだそうです。また、米津さんは曲を考えてはギターで弾いてみては坂東さんに「どう?」と尋ね、坂東さんがピアノで弾き直して返す、と言ったことを繰り返されていたとのこと。
Youtubeで詳しく語られていますので、ご興味のある方はぜひ。
・地球儀ラジオの中で、私が「ひょっとして?」と思っていたことが、ほぼ当たりだったことが判明しました。ライブツアー「空想」は、『地球儀』あっての構成だったとのこと。