午睡と虫養い

観た映画・ドラマの感想。時々漫画と本も。

【映画】1秒先の彼

1秒先の彼

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2023年07月08日土曜日に観てきました。結論から言うととても良かった!!!

 

元々原作である台湾映画『1秒先の彼女』が好きで、今回のリメイクの話が出た時「ええっどうなるの?」と不安半分期待半分で、でも楽しみにしていました。

(『1秒先の彼女』は、鑑賞後に出た雑誌『ユリイカ』の台湾映画特集号を買ったくらいに気に入りました。「他者の身体に、本人が気づかないうちに関与することの是非について」といった議論も興味深く読んでいました)

 

でも「男女を入れ替える? だけどこの映画はワンテンポ早いのが『彼女(女性)』だから面白いんじゃないの?」と思っていたし、そして男女を入れ替えることで起こりうる「この設定はそのままでは使えない」部分も、一体どうするんだろう?という点についても私には想像がつかず。結果的に杞憂でしたけどね! さすがクドカン

 

以下ネタバレありです!

 

 

冒頭に書いた通り、大変良かった。ほんとリメイクとしては満点超えて120点だと思います。満足。

唯一惜しいなと思ったのは、原作のヒロイン・シャオチーのあの早口台湾語が再現されていなかったことくらい。私が温又柔・著『魯肉飯のさえずり』を読んでいて、あの「さえずり」と表現するに相応しい早口台湾語が印象深かったせいもあるかもしれませんが、ともあれ、ヒロインの早口が作品のアクセントになっていたのは間違いないと思うので、そこが削られてしまったのは惜しかった。でも関西人で早口って言ったら大阪になっちゃうし(イメージとしてね)、かと言ってはじめ君を大阪人設定にするわけにはいかないもんね〜 その分口が悪い設定にしたのかな。なんて思ったりしました。

 

リメイクで「おおお、すごい」と思った点。

 

・1日の空白ができた理由が具体的:

 原作だと単純に「グアタイが人よりワンテンポ遅いから1日分の時間が貯まった」みたいな設定だった気がするんですが、日本版では「名前の長さの違いによって人との時間に差が生まれる」という設定になっていて、具体性を持たせてるところが良かったです。説得力があるし、荒川良々さん演じるミクルべさんや皇お父さんも同じく時間が貯まった理由もできたし。

 

・ミクルべさんの存在:

 「男女入れ替えたら、まずヒロインがヒーローを運べなくない?」と思ったんですよね!それを見事に解決してくれたのがミクルべさんでした。そして天橋立という場所設定もとても良い。人力車ねーーーなるほどねーーー観光地だからねーーー!!!

 

・公園で太極拳やってる皆様:

 これ原作でも印象的だったので、取り入れられていてニコニコしてしまいました。

 

・はじめ君と皇お母さんが食べる素麺:

 原作だとシャオチーのお母さんは春雨工場やってる(勤めてるんだったっけ?原作見直さないと…)んですよね。お父さんが買いに行く豆花といい、台湾の食文化〜なんて思いながら観ていたので、春雨も印象的だったんですよ。それを七夕に公開されたこの映画の劇中で、はじめ君とお母さんは素麺を食べるっていうね!すごい!このリメイクすごい!

 

・原作で議論になった「他者の身体に関与する」ことについて:

 原作だと、グアタイ(男性)が時が止まってしまったシャオチーの体を動かして(触って)写真を撮ったりするので、公開時にその点が結構議論になったと記憶しています。*1

 その点、男女入れ替えたせいか、そんなに嫌な感じはしなくなっていました。何故なんでしょうね、「当人の同意を得ずにその人の身体に関与している」という点では同じなんだけど。この辺結構興味深いです。本来は嫌悪感を感じるべきなのかもしれない。

 あ、でも今気づきましたが、時が止まる直前「シャオチーが痴漢に遭いそうになっていた」というのも観る人にとってマイナスに働いていたのかもしれない。

 「無警戒のシャオチーに痴漢を働こうとしたのは男→グアタイも男」「男であるグアタイも、無防備なシャオチーによからぬことをしでかすのではないか」と、観客に無意識に警戒させたところはあるんじゃなかろうか。シャオチーが痴漢ではなく、日本版と同じくスリに遭いそうになっていたとしたら、グアタイの行為は議論の的になるほどには注目されなかったかもしれない。どうでしょうか。

 

他にもいろいろありますが、以上、リメイクで「すごいなー」と思った点でした。

 

以下思いつくままに。

 

クドカン脚本の作品は結構好きなんですが、クドカンって下ネタが直接的かつ量的に多いことがあるんですよね。先日Netflixで公開されて評判の良い『離婚しようよ』も、私は1話は観ましたがどうも下ネタが多くて2話目に進めずにいます…『ゆとりですがなにか』も、1話で柳楽優弥が「おっぱい」連呼してて私はダメだったんだよなあ。

『1秒先の彼』も下ネタがなくはないものの、少なかったので大丈夫でした。良かった。個人的に少なくてもクドカンの良さは失われないので、この程度にしておいてくれると有難いんだけどな。まあでもきっとご本人の性癖みたいなのもありそうだから仕方ないんだろうな。「クドカンのそこがいいんじゃん!」という人もいるだろうし。

 

はじめ君の幼少時代を演じてるのは柊木陽太君じゃないですかーーーー!!!映画『怪物』の依里だーーーー!!!この子有望株ですね!!この先も活躍が楽しみです。

 

はじめ君が「百万遍は京大生の巣窟やしなあ」と言う台詞があって、一人でウケてました。確かにあの辺は京大生の巣窟。

 

ところで、台湾版を日本版にリメイクするにあたり、舞台を京都にしたのは「ファンタジーにするなら京都がピッタリ」とクドカン?監督?が思ったから、と言う記事をどこかで読んだのですが(検索したけど探しきれなかった…)「ファンタジーなら京都」っていうイメージはいつくらいから定着したんだと思います? 私は森見登美彦が大元だと思ったんですが。もりみー登場以前は、ファンタジーな京都って『陰陽師』とか、平安時代設定の作品が多かった気がするんですよね。もりみーが人気作家になってから、「現代設定でファンタジーをやるなら京都」というイメージが色濃くなったような。どうでしょうか。

 

 

 

最後。

天橋立は行きましたが、伊根には行ったことがないので行きたいです!!

 

(字幕版)1秒先の彼女

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*1:ユリイカ2021年8月号/特集=台湾映画の現在』の監督へのインタビューでもこの点について触れています。241ページ。