午睡と虫養い

観た映画・ドラマの感想。時々漫画と本も。

【映画】怪物

gaga.ne.jp

 

2023年6月4日日曜日に劇場で鑑賞してきました。

できるだけ前知識を入れたくなかったので極力アーアーキコエナイーで情報を入れずに行きました。まあそれでも多少は耳に(目に)入ってしまったんですが。

にしても、監督と脚本・音楽担当のお名前は把握していたのに、「脚本すごい!」「音楽すごい!」と思いながら観ていてですね、エンドクレジットで「あっそうだった坂元裕二だった!」「あっそうだった坂本龍一だった!!」とびっくりしました…私の頭は鳥頭…

 

そんなことはともかく。

非常にすごい作品でした。そりゃカンヌで賞も獲るわよ。受賞は納得ですよ。私もその場にいたらスタンディングオベーションするわ。本当にすごい(素晴らしい、とはまた違う感じがするので)作品です。みんな観に行こう。

是枝監督×坂元脚本て最強タッグではないだろうか。ご本人たちも乗り気だったし、是非またこの二人で作品を作って欲しいです。観たい。

 

以下ネタバレありの感想です。

 

 

最初はシングルマザーの早織(安藤サクラ)の視点で進むので、保利先生(永山瑛太)がめっちゃ怪しく見えるわけですよ。序盤は私「瑛太…考えあってのことだろうけど、『あなたがしてくれなくても』の陽一といい保利先生といい、ダメ男ばっかり演じてるなぁ…」って思ったくらいです。

でも他者の視点で描かれると全く違う話になる。個人的に「まず事実確認をしなきゃダメだ。憶測で物を言っても事態は拗れるばっかりだ」という話をしたばかりだったんですが、ほんっとまずは事実確認だわ。まあ、その事実確認すること自体がいかに難しいか、ということも、映画を観ているうちに痛感することになるのですが…

 

少年二人については「ひょっとして?」と思っていたら本当にそうだった。それを描いたところが坂元脚本のすごいところだよなぁ…こんな「芽生え」の時期を描いた作品は寡聞にして知りません。でもそんなにないんじゃないかなー多分(高校生くらいになってから「あれ、俺ってひょっとして…」みたいな設定はよく目にしますが)

(子役の子たちにインティマシー・コーディネーターとまではいかなくても、その辺の丁寧な説明とケアがあるといいな、と思いました)

(と思っていたらパンフレットにちゃんと書かれていました。以下引用)

(パンフレットが充実していたので、できれば購入をお勧めしたい)

本作は性的指向の問題や体への接触を伴うシーンを扱うこともあり、撮影にあたって入念な対策が取られた。山田*1いわく、監督やスタッフ、キャストは事前に講習を受け、現場にはインティマシー・コーディネーターが参加し、俳優たちへのサポートを行なっている。 

ー映画『怪物』パンフレットより引用

 

私は子供たちに「あなたは女の子を好きになることも男の子を好きになることも、どっちも好きになることも、どっちも好きにならないこともある」といったことは折に触れ話しています。性愛からは縁遠いと思われる幼い時期から教えておくことで、いざという時に戸惑わずに済むし、誰かを傷つける可能性を減らしてくれると思っているので。あとね、やっぱりまだまだ世の中全体として「男は女が好き」「女は男が好き」という刷り込みが大きいから。そして私自身もその刷り込みから抜けるのにかなり時間を要したから。

 

早織はおそらく30代半ば〜40歳くらいだと思われます。私も近い世代なのですが、中高生時代、当時「ホモ」「オカマ」と言われていた人たちがテレビの中で品を作りオネエ言葉を使い、揶揄されて「もぉ〜!」と軽く怒ってみせる、そんな扱いをずっと見て育ってきました。劇中、早織は悪気なく、息子を笑わせようとしてクィア(なのだろうか)の芸能人の真似をします。あれは「おいおい、今時それはないわ〜」と思いましたが、早織世代にとっては「テレビでもよくやっていた(いる)『普通』」なんですよね。刷り込みは怖い。…まだ自分の性的指向に気づき始めたかどうか?という時期にいる湊は、相当動揺したよねきっと…

でも早織、「息子を盲愛するシングルマザー」と紹介されているのをいくつか見ましたが、いや別に盲愛してなくない? 至って一般的なお母さんだと思ったよ。子供が怪我して、子供が「先生にやられた」って言ったらそりゃ信じるでしょう。疑ったら疑ったで「毒親」とか言われちゃうんだろうし、ほんと母親って割に合わないわあああああ(横道に逸れた)

 

↑ここまで書いておいて大分放置してしまっていました。今はもう7月8日です…

 

「怪物誰だ?」という台詞があることもあり、「怪物は誰を指すのか」という話を見かけます。でも私は「誰」ではなく「何」な気がする。私にとってこの映画における怪物は「憶測」「思い込み」「先入観」。それらは誰もが持っているから、「誰」というなら私たちみんなが怪物なんだと思う。

 

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全然まとまってないけどとりあえず公開!!!しないとずっと下書きのままなので!

 

 

 

*1:引用者注:本作プロデューサーの山田兼司氏