パチンコ
すごい小説を読んでしまった……
Twitterに流れてきたので興味を持って読んでみました。分厚いし「読み切れるかなあ」とちょっと不安だったのですが杞憂でした。もうね、多分時間があったら一気に読んでいたと思う。下巻なんてページをめくる手が止まらなくて3日連続で夜更かししてしまい、挙句風邪を引きかけたもの。
とてもじゃないけれど簡単に感想なんぞ書けません。書けませんが、思いつくままに己の感じたことは書き留めておこうと思います。
ネタバレを含みます。その点ご承知おきください。
まず私自身が在日コリアンとその歴史について無知であったことに対し、大変恥入りました。薄っぺらい知識と認識しかなかった。無知は罪だ。ほとほと痛感しました。
思えば修学旅行(海外)で「パスポートの関係で、行かない」という子がいたなあ…
印象的な場面はたくさんありますが、一番はノアの死。何でだよ…何でだよノア…
ソロモンの想像通りなんだろうな。とは思うものの、自死以外の道はなかったんだろうか。ソンジャが訪ねてきたのが引き金になったのも辛すぎる。ノアに関しては本当に辛い。残された奥さんと子供たちのことももう少し考えなよ…
ソンジャの母・ヤンジンの言葉も強烈すぎて辛かった。なんだろうなあ…抱えてたんでしょうね…でもさあ……辛いわーーーーー
全体的には「臭い」についての描写が多かったのが印象的でした。『パラサイト 半地下の家族』でも「臭い」の描写が多かったですね(『パラサイト』については、「でも重要な場面で臭いがなかったようになってるのは何でやねん」とちょっとツッコミ入れてしまったけれど)確かにキムチはじめ、匂いの強い食事は多いし、『パチンコ』が舞台としている時代や場所、登場人物たちの生活環境を考えると、臭いは無視できない要素でしょう。
先日Twitterで「昭和の時代は臭かった」という話が流れてきてました(Togetterに纏まっていたのが上記リンク先)
確かにそうだと思います。昭和は遠くなりにけり、ですが、幼少時の記憶からすると確かにその通り。それに学生時代を過ごした2000年前後も結構ひどいもんでしたよ。その辺でタバコ吸ってたし(歩きタバコ禁止条例=路上喫煙禁止条例が千代田区で出されたのが2002年)
閑話休題。
『パチンコ』ではそうした嗅覚に訴える描写が多く、それが物語に更なる奥行きを与えています。
在日コリアンの話、というと「日本人が悪者なんだろ」と捉えられるかもしれませんが、作中でも何度か語られている通り「在日コリアンにも悪い奴はいる。良い奴もいる。日本人だって悪い奴はいる。良い奴もいる」物語です。その点とても公平に書かれていると思いました。作者のミン・ジン・リー氏の夫は半分日本人にルーツをお持ちだそうでリー氏のお子さんは1/4は日本人ということになります。ということもあってか(なくても、だろうけど)、この辺りはとてもフラットに描かれていると感じました。
(とは言え、読んでいて一人の日本人として「ごめんなさいごめんなさい」と何度も思ってしまったけれどね)
ヤンジンさんとキョンヒさんがお気に入りのテレビ番組を観ているところの、なんとなく辛かあった。お気に入り、とあったけれど、どういう気持ちで観てたんだろう。「苦生(コセン)」という言葉にソンジャが思い巡らすところも印象的でした。物語は1989年で終わっているんだけれど、ソンジャさんはその後夜間中学に通ってフェミニズムに目覚めるのではないか…なんて想像したくらい。ソンジャさんに息子だけでなく娘がいたら、どう育っていたでしょうね。どう育てていただろうか。『パチンコ』の後、『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョ・ナムジュ著『彼女の名前は』を読んでいることもあり、そんなことも考えました。
今後も追記すると思いますが、ひとまず。
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20年10月29日追記。
数日前、Apple TVでドラマ化って言っていたような、と思ってググっていたらキャストが決定してました! イ・ミンホがコ・ハンスか〜〜〜〜ノアでも良いように思ったんですが、まあ最初から最後まで登場するのはコ・ハンスとソンジャだもんね。
日本の女優さん(南果歩さんとか)が登場するのも嬉しい驚きでした。完成が待ち遠しい!