午睡と虫養い

観た映画・ドラマの感想。時々漫画と本も。

映画『CUBE 一度入ったら、最後』

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映画『CUBE 一度入ったら、最後』(画像は公式サイトのスクリーンショット

movies.shochiku.co.jp

 

music.apple.com

 

2021年10月31日に劇場にて鑑賞。

本作品は日本版リメイクで、オリジナルはカナダの作品です。

https://www.netflix.com/jp/title/60027486?source=35 ←Netflix

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08H49D287/ref=atv_dp_share_cu_r ←Amazon Prime Video

 

私はなぜかこの作品を観ていたのです…公開が1998年なので当時高校生の私が劇場で観たはずがありません。*1 どういう経緯で観たんだろう…内容からしてテレビ放送したとも思えないので、多分レンタルビデオとかかなあ?ということに落ち着いたのですが、基本ホラーっぽいものは避けて通るので我ながら何故観たことがあるのか謎です。

ただこの映画で描かれている不条理さやラストシーンは(多少記憶違いがあったものの)強烈に覚えていて、折に触れ「あーCUBEって映画が面白かったんだよねえ」と思い返す、そんな映画でした。

 

今回日本版が公開されるということで事前にNetflixでオリジナル版を再見しました。やっぱり面白かった! いや面白いと言っちゃいけないのかもしれませんが…(こういうときなんて言ったらいいんだろうね。興味深い?)

オリジナル版は1997年製作とのことなのですが、登場人物たちの倫理観や無意識下にある(でも表面化してくる)弱者・女性への蔑視など、今観ても全く古びておらず唸りました。まあ「うわークエンティンなんなのこの時代錯誤男ー!古いわ〜やっぱり24年も前だとね〜この辺の価値観が古いのは仕方ないか」とか言えた方がいいんですけどね本当は…古びててほしかったよねえ…

ラストも「あーそうかこうだったか。で、そうそうそうこれこれこれ」と記憶を新たにすることができて良かったです。ちょっとラストは記憶違いしてたので。

 

 

前置きが長くなった。以下ネタバレありでの感想です。

 

 

 

 

実を言うと「日本版リメイクが公開されるよ!」と知ったとき、観に行くつもりはなかったのです。前述の通りオリジナル版が印象深かったので、「ええ〜日本版〜〜〜ええ〜〜〜あれを〜〜〜〜???」と思ってしまったんですね。多分オリジナル版観た人はみんな同じ反応をしたんじゃないでしょうか。なんなら菅田将暉くんも源ちゃんも同じようなことを言っていたw(菅田将暉ANNおよび星野源ANNにて)

ただフォロワさんから「意外と面白かったよ!」と言う感想も聞けたし、源ちゃんが主題歌やってるし、菅田くんだから少なくとも演技は楽しめるだろうと思って行ってきました。あ、それにオリジナル版の監督ヴィンチェンゾ・ナタリ氏がクリエイティブ協力している初の公認リメイクだということだったので、変なことにはなっていないだろうと…

 

結論から言うと、良い意味で「日本版のキューブ」になっていて、結構好感を持ちました。面白かったです。「うん、邦画!いかにも邦画!」とも思いましたけど。この辺は仕方がないというか、オリジナル版をそのまま日本人キャストでやりました、じゃあつまんないしね。

 

冒頭からサイコロステーキ先輩=柄本時生の無駄遣いにちょっと笑ってしまいました。もったいない使い方!!(褒めてる)ていうかここはオリジナル同様まんまサイコロでも良かった気がするんだけれども変更した理由がちょっと知りたい。

 

※ここから辛口※

正直言うと回想シーンは無しで頑張って(組み立てて)ほしかった。後藤(演:菅田将暉)の回想シーンだけで済んでまだ良かったけれども…せっかくのワンシチュエーションなのに、回想とはいえ他の場面が入り込むのはちょっと野暮な感じがしました。

それからオリジナル版カザンが子供(宇野千陽/演:田代輝)に変更になっているのもなー。数字の鍵を解くのはサヴァン症候群と思われるカザンがいてこそだと思うし、「閉じ込められている」という状況下で明らかに能力のなさそう(実はあるけど)な人がいることで周りがどう反応するのか?という点も見所なので、残念というか勿体無いというか。障害者を出すことをためらったのか、後藤のキャラクターを立たせるために設定変更したのか…ここも理由を知りたいところです。

女性が一人とはいえ甲斐さん(演:杏)がいたので、オリジナル版でのレブンとハロウェイを足して2で割った役どころかな〜と思っていたのですが違いましたね。違うのは構わないんだけど、オリジナル版を再見して「6人しかいないけれども、それぞれバックグラウンドが異なっていてバラエティ豊か。そしてその違いから対立が生まれる」という設定が見事だなあと改めて感じたので、その点が損なわれているのはやはり残念でした。

それに甲斐さんは中盤ほんと影薄かったしなあ。途中で「甲斐さん何やってるの…何もしてないな…何故…?」って思いましたもの(もちろん設定上の理由もあるんだけれど、にしてももう少し絡んでも良かったのでは)それもあって、日本版CUBEは完全に「男性だけの話」になってしまってるんだよね。これはとてもとても残念だなと思います。

越智くん(演:岡田将生)を女性設定にしたら良かったのに!とまでは思わないけれども(安東さんとの対立はそれはそれで日本版の特徴として良いと思うし)、甲斐さんが日本版オリジナルキャラならば、原作版の女性キャラ的人物もどうにかして入れてほしかったな。

※辛口ここまで※

 

つい辛口感想を書き連ねてしまいましたが、でもでもでも、日本版リメイクとしてはかなり良かったと思うんですよほんとに。

先述した通り、「オリジナル版を日本人キャストでやりました」じゃあつまらんのですよ。越智くんの閉塞感や無気力・怒りの感情や、「あーいういるこういうおっさんいる」と思わせてくれる安東さん(演:吉田鋼太郎)、俺は俺でやるからなって顔をしておきながら結局は他人を助けて死んでしまう井手さん(演:斎藤工)とかね、人物設定が面白かったです。日本っぽい!日本っぽい! 後藤も千陽くんも、大変日本っぽい。

それからオリジナル版だと「水も食料もないのにどうするんだよ出口云々の前にそっちで死ぬぞ」という大変現実的な問題提起がなされて、それに対する策も編まれるのですが、そうした生理現象等の描写や懸念が一切ないのも「日本版っぽい!」と思いました。(これ褒めてるよ!褒めてるんだよ!信じて!)

 

ところで菅田将暉ANNだったか星野源ANNだったか定かでないのですが、「この映画には希望が込められている(少なくとも監督的には)」という話が出ていたのですが、この日本版…希望…あるのかなあ…? 結局のところ絶望しか残ってないのでは。後藤はcontinueだったし、千陽くんはreleaseだったし、希望っちゃ希望なのかもしれないけれども。「希望」の捉え方がいろいろありそう。我らが源ちゃんは徹頭徹尾絶望しか主題歌に込めてないけどね!!w*2

 

(いかん、辛口感想に対して褒める感想の分量が少ない…)

 

 

 

 

ところで私は星野源ファンですので、今回の主題歌『Cube』も激烈におすすめしておきます。

転調具合がすごいなあ、でも源ちゃんきっと好きに作ったんだろうなと思っていたら、まんま「転調すごいっすねーとか言ってもらうんですけど転調とか知らねえよ好きに作っただけだよ!!!」とANNで絶叫してましたw だよねーw 転調とか考える人には、逆に作れないと思うんだな。

余談ですが、私が長らくJ-popが苦手だったのはAメロBメロサビ、みたいな構成が決まっているところだったんだなというのも、『Cube』のおかげではっきりしました。源ちゃんの曲はこの曲以前のものでも従来の「AメロBメロ」みたいな区分はしにくいな?とは感じていて、そこを好ましく思っていたのですが、『創造』の曲解説の時だったかな?「この曲はAメロとかA'メロとか、細かく分けるとそうなっちゃうと思う」みたいなことを言ってたんですよね。ああ、この人その枠に囚われずに曲作ってるのかあ、すごいなあ。と。

で、今回の『Cube』ですよ。星野源、あなたはすごいよ。曲で絶望しか歌ってなくても絶望をその歌でぶっ飛ばしてくれる。当分は『Cube』を聴いて私は生きていけそうです。

 

 

youtu.be

 

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メイキング、白黒じゃないのが逆に新鮮。当たり前だけど衣装には色がついてるんだなあ。

 

 

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対談動画を見つけたのでついでに。

 

 

 

*1:映画館に行くのに電車その他で1時間半はかかる田舎育ちだったのです

*2:星野源本人がANNその他インタビュー等で話しています。