午睡と虫養い

観た映画・ドラマの感想。時々漫画と本も。

【映画】あのこは貴族

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あのこは貴族 ※画像は公式サイトのスクリーンショット

anokohakizoku-movie.com

 

2021年3月13日劇場にて鑑賞。

なんと3月も中旬にもなって、ようやく今年初の劇場鑑賞を果たしました。このままズルズル観に行かなくなるんじゃないかと自分でも心配だったよ。

 

原作は風呂上がりに軽い気持ちで読み始めたらあまりに面白くて止まらず、うっかり風邪を引きかけるほどでした。というわけで映画も楽しみにしていました(が、緊急事態宣言やら何やらで公開してからもしばらく観に行けなかったわけですが)

 

全体的に良い映画で、特に、静かなトーンだったのが印象的でした。役者陣の演技もとても良かった。華子の所作の美しいところとか、慣れない環境で動揺してしまうところとか。美紀の、華やかな場所に慣れているようで実はいつまで経っても馴染めない感じとか。

 

以下ネタバレありの感想です(そして今回辛口が混じっています。「すっごく良かった!」という方は、悪いこと言いませんので、どうぞここでそっとブラウザを閉じましょう)

 

 

映画としては及第点だと思うんですよ…決して出来が悪いわけじゃないんだ…でも私にとっては原作が良すぎたんだなあ…

 

原作で、華子とタクシー運転手の会話、美紀とタクシー運転手の会話が冒頭と最後に置かれてるのがとても好きだったのですが、美紀の方は削られていたこと。披露宴に美紀が招待されている描写がなかったこと(あの場面で幸一郎が「えっなんで」と絶句するのが良かったのに)。まずこの2点が私には大いに不満でした。

「幸一郎も辛いんだよ」みたいに描かれていたのも邪魔に思えました。それ、この物語には要らなくないか。白けてしまったよ…そりゃ幸一郎の辛さもあるのはわかりますが、それは別の物語で語られるべきもので、『あのこは貴族』で触れなくとも良いのでは。

それから、特に逸子や平田さんの台詞が話し言葉ではなく書き言葉っぽくて気になりました。確かに小説の方ではそんな感じの台詞だったとは思うんですが、映像で声に出して言われると不自然に聞こえるんだよね…もう一工夫欲しかったな(この作品に限らず文字作品を映像化すると割と見かける現象ではありますが)

章立ての構成もどうなんだろう…なんの効果があったかなあとちょっと疑問。原作ではとても良い構成だなあと思ったのですが、それをそのまま映画でやることの意味とは?という。

 

ただ、華子が美紀の部屋に訪れて「美紀さんの部屋、居心地がいいです。全部美紀さんが作り上げたものだからかな」(そんな感じの台詞)を言った場面はとても良かったです。あの時、初めて華子は美紀が手にしているものを羨ましく、憧れを持ったのかもしれませんね。

美紀と平田さんが2ケツで自転車に乗るところも良かった。

 

 

全体的に「伝えたいことが多すぎてその分一つ一つがぼんやりしてしまった」感じがしました。見えないけれど厳然と存在している階級の話ならそこに、シスターフッドの話ならそこに、誰しも何かを背負っていて辛いみたいな話ならそこに、焦点を絞ったら良かったんじゃないかなあ(一観客の立場だから好き勝手言ってますが) 

うーん、ちょっと残念。